NTTが挑む、次世代通信インフラ構想「IOWN構想」を解説 ~2030年に実現を目指す近未来社会とは~
世の中の情報化や技術の発展が進む中で、人々の生活はより便利なものへと変容してきました。 最近では5Gも登場し、情報伝達のスピードをさらに加速させているように、今後もテクノロジーは私たちの生活は大きく変容していくことが想定されます。そんな中、今回は大きく私たちの2030年以降の生活を変えることが予想されるNTTの新たな構想「IOWN構想」についてご紹介いたします。
現在のインターネットには限界がある?
実は、既存のインターネット・情報インフラには限界があることをご存じ
でしょうか。人々のデータ使用量は年々増加しており、既存の情報通信システムでは情報処理に限界が訪れてしまうことが予想されているのです。また、世界では大量の消費電力がかかってしまうことも問題視されています。
このような現代社会の課題に対して、NTTが提唱したのが「IOWN構想」です。IOWN構想は、次世代の通信・コンピューティング融合インフラで、「大容量性」、「低遅延性」、「低電力消費性」が優れている点が特徴となります。
出典:IDC「November 2018 The Digitalization of the World From Edge to Care」よりNTT作成
課題を解決し、より便利で快適な生活へ。「IOWN構想」が叶える社会とは?
生活が“リモート化“する中、リモート上の会話やコミュニケーションの際に生じるタイムラグに不便さを感じたことがある方もいるのではないでしょうか。IOWN構想では、 高速大容量通信を提供するネットワーク等により、コミュニケーションのズレを解消します。また、さまざまな情報をリアルタイムに流通・処理を行うため、「未来予測」ができるようになり、医療やヘルスケアの分野の活用も期待されています。
IOWN構想により、ネットワーク上の課題の解決とともに、より便利で快適な生活が実現しようとしています。
例えば…リモートでも声がリアルタイムで聞こえる!臨場感のあるリモート観戦・ライブを楽しめるように
新型コロナウイルスの影響により主流となったリモートでのスポーツ観戦や音楽ライブは、どこからでもスポーツや音楽を楽しめるというメリットがある一方で、「周囲の歓声や反応が聞こえず、物足りない」という声や、「音声のずれや反応のタイミングに違和感を感じる」という意見が少なくありません。
IOWN構想が目指すのは、同じ場にいなくても、別の場所にいる仲間の声がリアルタイムで聞こえる、臨場感・一体感溢れるライブ体験です。既存インフラよりも大容量かつ低遅延、低電力消の次世代インフラが、離れていても仲間と繋がれる喜び、高揚感を提供します。
例えば…何の病気にかかりやすいか未来予測も可能に!?
医療やヘルスケアの分野では、いつ頃、何の病気にかかりやすいかなどを正確に予測することが実現すると言われています。体温や血圧、心拍数などの日々のバイオデータとこれまでかかった病気の履歴、ゲノム情報などを合わせて演算処理することにより、各個人ごとの予防や、病気にかかった時の迅速な対応ができます。
例えば…歌舞伎の声掛けがタイムリーにできる!?
舞台などをインターネットを通じてリモート中継するとき、現在のインフラでは映像の品質を圧縮する作業や映像を転送する際に遅延が生じ、全くのリアルタイムで演者と観客が同じ時間を共有することはできません。しかし、IOWN構想では、低遅延性のインフラを用いることで、例えば歌舞伎において、演者タイミングにあわせて、タイムリーな声掛けを行うことができます。
例えば…車の事故の確率が格段に減る!?
現在の自動運転では、車両に搭載したカメラで読み取ったデータをクラウドに送信、AIが解析して車両に転送します。その際、通信の遅延時間(レイテンシ)が発生し、事故を完全には防ぎきれないという問題がありました。IOWN構想では、高速なデータ処理で車両に状況を瞬時に伝達し、事故の確率を格段にさげることが可能です。
この未来を実現する新構想!NTTが実現を目指す「IOWN構想」とは?
IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想とは
革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。2024年の仕様確定、2030年の実現を目指して、NTTが研究開発を始めています。
IOWN 構想を成り立たせる3つの要素
これまでの情報通信システムを変革し、現状のICT技術の限界を超えた新たな情報通信基盤の実現を目指しているIOWN構想は、主に下記の3つの要素から成り立ちます。
①「オールフォトニクス・ネットワーク」
<情報処理基盤のポテンシャルの大幅な向上>ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入
②「デジタルツインコンピューティング」
<サービス、アプリケーションの新しい世界>実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測等を実現
③「コグニティブ・ファウンデーション」
<すべてのICTリソースの最適な調和>あらゆるものをつなぎ、その制御を実現
「IOWN構想」を目指す社会的背景とその目的について
背景①価値観の多様性
社会の情報化がますます加速し、AIやIoT(Internet of Things)技術が生活シーンに取り入れられていくことで、私たちの暮らしは大きく変わり、多種多様な価値観が出てくると考えられます。他者への理解を深めるためには、自分とは違う他者の立場に立った情報や感覚、他者の目線を通した情報を得ることが重要であり、IOWN構想の実現による高度なオンラインでのコミュニケーションがその助けになると考えています。
背景②インターネットの限界を超越
データの使用量は年々増えており、今後も膨大な情報処理が必要となります。既存の情報通信システムでは、伝送能力と処理能力の双方に限界が訪れます。日本のインターネット内の1秒当りの通信量が2006年から約20年間で190倍
(637 Gbit/sから121 Tbit/sへ)になるという推計や、世界全体のデータ量が2010年から15年間で90倍(2ZBから175 ZBへ)に増加するという推計があります。
背景③消費電力の増加の克服
IoTの発展によるネットワーク接続デバイスの爆発的増加は、ネットワークの負荷を高めるだけでなく、エネルギー消費の面でも大きな懸念になっています。また、データセンタの電力消費量の増加も世界的な問題となっており、これらのような社会的課題を、IOWN構想では以下のように解決していく見込みです。
・エレクトロニクスとフォトニクスの融合による電力効率の大幅な向上によって、爆発的に増大する情報量にも対応できる処理能力を提供する
・通信の大容量化・低遅延化によって、さまざまなセンサが収集した五感を超える膨大な情報をリアルタイムに伝送する
・機密性や安定性を高度なレベルで提供可能になり、ミッションクリティカルサービスでも利用できるようにする
・さまざまなリソースを一元管理するマルチオーケストレータによって、業界や地域ドメインを超えたリソース活用を可能にする
・モノだけでなく人も含めたさまざまなデジタルツインを組み合わせて実世界の「再現」を超えたインタラクションをサイバー空間上で自由自在に行い未来予測等に活用する
会社概要
名称:日本電信電話株式会社
住所:〒100-8116 東京都千代田区大手町一丁目5番1号
大手町ファーストスクエア イーストタワー
設立:1985年4月1日
代表取締役社長:澤田純
URL:https://www.rd.ntt/iown/