「AIエージェント×AXフォーラム ~量子~」開催レポート:量子コンピュータ時代は「データ戦略」が競争力を左右
- 1. 各セッションの概要
- 1.1. セッション1:「Quantum Ready Enterprise -量子コンピュータ時代に企業が準備すべき『次世代データ経営』」
- 1.2. セッション2:「AI Quantum Industry Data Platformー量子産業のデータ・AI・組織知能を統合し、研究開発から事業化・投資判断までを最大化する基盤プラットフォーム」
- 1.3. セッション3:「AIエージェント時代の量子特許分析 ~特許情報から、先端技術と競合動向を読み解く~」
- 1.4. セッション4:「量子技術の社会実装を成功に導くポイント」
- 1.5. セッション5:「量子コンピュータの産業利用を加速するAI・量子共通基盤プロジェクト」
- 1.6. セッション6:「量子技術の社会実装に向けた戦略立案へのヒント」
- 1.7. セッション7:「Quantum Safeの最新動向と実用的なシステム」
- 1.8. セッション8:「量子関連の技術動向と理化学研究所の取り組み」
- 2. 登壇者による特別セッション
- 3. 今後の展望とAIデータ株式会社について
各セッションの概要
セッション1:「Quantum Ready Enterprise -量子コンピュータ時代に企業が準備すべき『次世代データ経営』」
AIデータグループ代表の佐々木 隆仁氏は、量子コンピュータ時代の企業競争力は、量子コンピュータの導入そのものではなく、量子技術を活用できるデータ・知財・セキュリティ・組織基盤の事前整備によって決まると提言しました。研究・実験データ、特許、契約、論文、現場知見などが部門ごとに分断された状態では、量子技術の力を十分に引き出せないと指摘。「Data Ready」「IP Ready」「Security Ready」「Organization Ready」の4つを「Quantum Ready Enterprise」の条件として提示しました。また、企業内のリアルデータを整理・関連付けし、AIエージェントが活用できる「組織知能」へ変換する次世代データ経営の重要性を解説し、今から自社データの棚卸しと小規模な量子活用プロジェクトを始めることが、量子時代の競争力につながると強調しました。

セッション2:「AI Quantum Industry Data Platformー量子産業のデータ・AI・組織知能を統合し、研究開発から事業化・投資判断までを最大化する基盤プラットフォーム」
AIデータ株式会社取締役CTOの志田 大輔氏は、量子産業における課題として、研究・実験・特許・市場などのデータが分散し、組織横断で活用しにくい「データサイロ」と属人化を指摘しました。講演では、これらを統合し、AIで解析・知識化して研究開発から事業化、投資判断までを支援する「AI Quantum Industry Data Platform」の考え方を紹介しました。架空の製薬企業を題材に、AIエージェントが専門的に分析し、最終的にAI PMOが全体最適化するデモが披露されました。量子時代の競争は、量子コンピュータの完成を待つのではなく、今から「Quantum Ready Data」を整備することから始まると強調しました。

セッション3:「AIエージェント時代の量子特許分析 ~特許情報から、先端技術と競合動向を読み解く~」
リーガルテック株式会社代表取締役社長の平井 智之氏は、生成AIの進化により特許出願のスピードと件数が急増する中、特許を将来の競争領域を先読みし、研究開発投資を回収・再投資するための戦略資産として捉える重要性を解説しました。量子分野は技術の専門性が高く、用途やプレイヤーも分散しているため、従来の人手による特許分析には多大な時間と専門知識が必要であると指摘。そこで、AIエージェントが自然文から検索式を生成し、特許検索、技術分類、企業比較、注目特許の抽出までを短時間で実行する「My Tokkyo.Ai」の活用を紹介しました。今後は検索技術そのものよりも、AIが提示した結果をどのように研究・事業戦略に生かすかが競争力を左右すると述べました。

セッション4:「量子技術の社会実装を成功に導くポイント」
デロイトトーマツサイバー合同会社マネージングディレクターの松尾 正克氏は、量子技術を研究成果で終わらせず社会実装へつなげるためには、技術開発と並行して法規制、規格、知財、代替技術、投資戦略まで見据える必要があると解説しました。製品化の段階で法規制違反が判明すれば大きな手戻りにつながるため、PL法や欧州サイバーレジリエンス法、関連規格などを早期から考慮する重要性を指摘。コア技術だけでなく、実際の利用場面で生じる課題を押さえる「周辺特許」の戦略的な取得が社会実装の成否を左右すると説明しました。さらに、量子技術とAI、特にフィジカルAIを掛け合わせ、投資を呼び込める大きなイノベーションへ発展させる視点が重要だと強調しました。

セッション5:「量子コンピュータの産業利用を加速するAI・量子共通基盤プロジェクト」
株式会社KDDI総合研究所量子基盤室室長の斉藤 和広氏は、量子コンピュータの現状と産業利用に向けた課題を整理し、KDDI総合研究所が進める「AI・量子共通基盤」について紹介しました。量子計算は最適化、機械学習、化学計算などで高速化が期待される一方、現状は専門知識が必要で、用途に応じた計算機の選択や不安定なハードウェアの運用が大きな障壁になっていると指摘。そこで、量子の専門家でなくても適切な計算資源やアプリケーションを利用でき、将来ハードウェアが進化してもアプリケーションを大幅に作り替えずに済む、いわば計算基盤の「TCP/IP」のようなミドルウェアを目指していると説明しました。まずは最適化や化学計算を対象に実証を進め、産業界で手軽に量子計算を活用できる環境の実現を目指すと述べました。

セッション6:「量子技術の社会実装に向けた戦略立案へのヒント」
独立行政法人工業所有権情報・研修館知財戦略エキスパートの戸﨑 善博氏は、量子技術の社会実装を事業・技術・知財の「三位一体戦略」から捉える重要性を解説しました。量子分野では特許・論文が急増し、日本も世界有数の特許出願国である一方、実用化には技術開発だけでなく、狙う市場やビジネスモデル、連携パートナーを定め、それを支える知財・契約戦略を設計する必要があると指摘。量子コンピューティングの発展を見据え、オープン領域、競争領域、共創領域を見極めながら、自社がバリューチェーンのどこで価値を生み出すかを考える視点を提示しました。さらに、AIと量子の融合が進み、AIが古典・量子計算を最適に使い分けることで、量子計算を業務成果へ変換するエコシステムが形成される可能性を展望しました。

セッション7:「Quantum Safeの最新動向と実用的なシステム」
NTTドコモビジネス株式会社イノベーションセンター主査/耐量子暗号エバンジェリストの森岡 康高氏は、量子コンピュータの進化によって現在の公開鍵暗号が解読されるリスクを踏まえ、「Quantum Safe(耐量子安全性)」への移行が企業にとって重要な課題になっていると解説しました。中心となるPQC(耐量子計算機暗号)への移行は、暗号アルゴリズムの置き換えだけでなく、認証基盤や証明書、ゼロトラスト、デバイス認証、API、業務アプリケーションなど幅広いシステムに影響すると指摘。各国が2035年を意識した移行を進める中、早期の準備が必要だと説明しました。さらに、SIMカードを活用し、PQCによる鍵交換と軽量な相互認証、暗号通信を実現する実証システムを紹介し、PQCとQKDを適材適所で組み合わせる次世代セキュリティの方向性を提示しました。

セッション8:「量子関連の技術動向と理化学研究所の取り組み」
理化学研究所量子コンピュータ研究センターの井門 孝治氏は、世界的に量子関連の特許・論文が増加し、量子技術が研究段階から社会実装へ移行しつつある中、日本が持つ技術力を産業競争力へつなげるための産学連携の重要性について解説しました。量子コンピュータ、量子通信・暗号、量子マテリアルなど各領域で研究開発が活発化し、日本は量子関連特許で世界でも高いシェアを持つ一方、海外ではスタートアップが積極的に特許を取得しているのに対し、日本では大企業が中心という構造的な違いを指摘しました。優れた研究成果を事業化につなげるには、研究機関と企業が連携し、技術移転や知財活用、人材交流を進めることが重要だと説明しました。

登壇者による特別セッション

特別セッションでは、量子技術の社会実装を巡り、知財戦略、データ活用、産学連携、量子セキュリティなどをテーマに意見交換が行われました。中国企業が将来の用途を先読みして特許を取得している事例を踏まえ、研究成果が出てから出願するのではなく、将来の事業像や市場を見据えて知財ポートフォリオを構築する重要性が議論されました。また、AI活用においては、公開情報だけでなく、企業や研究機関が持つ暗黙知や非公開データを形式知化し、安全に活用することが競争力につながるとの見解が示されました。さらに、量子コンピュータの進展に伴う暗号解読リスクにも触れ、PQCへの移行だけでなく、IoT・ロボットなどエッジ領域への対応やQKDとの組み合わせも重要であると指摘されました。議論を通じて、量子技術を「将来の技術」として待つのではなく、データ・知財・セキュリティ・組織の準備を今から進め、自社の事業成長と競争優位につなげることが「Quantum Ready Enterprise」への第一歩であるとの認識が共有されました。
今後の展望とAIデータ株式会社について
AIデータ株式会社は、2026年8月20日(木)に「創薬・バイオ」をテーマとした「AIエージェント×AXフォーラム」の開催を予定しています。詳細および申し込みは以下よりご確認ください。
AIデータ株式会社は2015年4月に設立され、代表取締役社長は佐々木 隆仁氏です。データインフラと知財インフラを基盤に、20年以上にわたり企業や個人のデータ資産を守り、活用する事業を展開しています。9,000社以上の企業、90万人以上のお客様から信頼を得ており、データ共有、バックアップ、復旧、移行、消去を包括する「データエコシステム事業」では、BCNアワードで17年連続販売本数1位を獲得しています。データインフラでは、IDXのクラウドデータ管理や復旧サービスを提供するとともに、経済産業大臣賞を受けたフォレンジック調査や証拠開示サービスを通じて、法務分野でも高い評価を得ています。一方、知財インフラでは、グループ会社の特許検索・出願支援システム『Tokkyo.Ai』や特許売買を可能にするIPマーケットプレイスの構築により、知財管理と収益化を支援しています。これらを統合し、生成AI『AI孔明TM』によるデータと知財の融合プラットフォームを展開しているほか、防衛省との連携による若手エンジニア育成にも注力し、データ管理と知財保護を通じて社会基盤の強化に貢献しています。
AIデータ株式会社の詳細は以下をご参照ください。
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